折り畳み傘と逆ピラミッド

いつ必要になるかわからないものは常に持ち歩くべし

 昨日みたいに台風が来て雨が降るに決まっている時は問題ないが、雨が降るかどうか微妙な時に傘を持って出かけるかどうかの判断は難しい。仮に持って行こうと決心したとして、鞄の中にそのスペースがなければ、何かを出してそれを作り出さなければならない。どうせ必要な空間なのであれば、常にそれを傘で埋めておけばなくなる心配はないし、忙しい朝に傘を持って行くべきかなどと悩む時間がもったいない。というわけで、傘は常に持ち歩くに限る。*1

 そのためには、コンパクトで軽く、ある程度の大きさがあって撥水性がいい傘が望ましい。50〜55cm くらいのものはいくらでもあるのだが、60cm超でコンパクトなものはあまりない。撥水性が重要なのは、使わない時は畳んで仕舞うからである。折り畳み傘を中途半端に畳んで電車の中で持っているのはどうも塩梅がよくない。ちゃんと畳んで袋に入れてデイパックの中に入れてしまえば両手が自由になるし、第一忘れる心配がない。朝悩んだり、電車の中で忘れないように気を付けたりという心理的プレッシャーを排除できる代償としては、晴れた日に傘を持ち歩くことなど小さなものだ。

安定供給してくれない傘

 今まで使った中でよかったと思われるのは、2000年頃に買ったオーロラ製の商品だった。特に、生地が形状記憶加工されていて畳みやすいのがよかった。しかし壊れて同じものを買いに行ったら売っていない。店員さんに尋ねてみると、常に生産しているわけではないので、次の生産ロットが入ってくるまで入荷しないという。しばらく待ってやっと買ってみると、以前のものとは若干仕様が違ったりして、あんまり気に入らないものになってたりもする。その後 K.R.I. という名前で商品化したようだが、これにしても同じものを頼もうとするとメーカにも在庫がないと言われた。傘というのは安定供給が難しい商品なのだろうか。

Knirps の逆3段ロッド

 最近使っているのはドイツの Knirps というメーカーのもの (Knirps Mini Ultralight 折りたたみ傘 Black KNA862-100)。ドイツでは有名なメーカーらしい。日本製の軽い傘は 200g を切っているので、240g のこの傘はそれほど軽くはないし、コンパクトなわけでもない。しかし、その構造がすばらしい。

 今まで使った日本製の3段式の折り畳み傘は、例外なく3段式の柄の部分の手元の部分が一番太く、上にいくに従って細くなっていって、傘に接続する部分が一番細くなっている。これに対して、Knirps の傘は写真をよく見るとわかるように、手元が一番細く、傘につながる部分が一番太くなっている。考えれば簡単に想像できるだろうが、風が強い時に最も負担がかかるのが、柄と本体の接続部分である。3段式の折り畳み傘は、この部分が極めて細くて華奢な造りなのが大きな問題だった。ところが、Knirps のように上が太くなっていれば、普通の長尺の傘と同じ強度を確保することができる。手元の細い部分が心配になったら上を持てばいい。


OSの逆ピラミッド構造

 この傘を見た時に、20年以上前に見たオペレーティングシステムのペーパーを思い出した。それも確かドイツ製だったような気がするのだが、もしかするとスイス製の Oberon だったかもしれない。とにかく、当時のオペレーティングシステムはピラミッド構造で表されて、一番下にハードウェアがあってその上にオペレーティングシステム、ピラミッドの頂点がアプリケーションというような具合だった。しかし、このOSの場合は、ピラミッドが逆さまになっていて、下の小さい部分がOSで上の大きな部分がアプリケーションだった。おそらくOSは限られた機能を最小限にコンパクトに実装し、ユーザに近いアプリケーションの部分のボリュームが大きい方が自然だという主張なのだろう。なるほど、そう言われればその通りだと、当時妙に感心したものである。

 当時の汎用機用OSが高価なハードウェアを有効に利用することを目的に作られていたのに対し、利用者の利便性を主眼に設計されているというのが UNIX の1つの大きな特徴だったが、逆ピラミッド構造も、当時のハードウェア至上主義に反発してのことだったのかもしれない。

*1:冷凍庫で冷やしているジンのボトルを空になった時に出してしまうと、次に開けた時には冷凍食品とかにその空間を奪われている。だから、空瓶をそのままにしているのだが、たまにバレてしまう。