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ハッカーを読め (1)

2007年に発売された、UNIX MAGAZINE Classic に書いた記事を再掲。

すべてがFになる (森博嗣)

すベてがFになる (講談社文庫)

すベてがFになる (講談社文庫)

 ベストセラー作家である作者について今更解説する必要はないだろう。この作品は森氏のデビュー作だが、まず冒頭の引用文でびっくりさせられるのだ。なんと、ぼくもよく知っている青木淳さんの「オブジェクト指向システム分析設計入門」からの一節が引用されているではないか。これを引用する作者も偉いが、引用される文章を書く青木さんもすごい、というかうらやましい。

 縦書きの文芸書の中に堂々と「UNIX」という文字が並ぶのを見ることはほとんどないので、そういう意味で希有な本だと思う。今となっては、Linux や BSD には商標上の理由で UNIX と呼べないので、これからも現れないかもしれない。

 物語の中で、UNIX は極めて重要な役割を担っている。正確には、物語中で使われているのは女性天才科学者真賀田四季UNIX をベースにカーネルレベルから根本的に改造した「レッドマジック」というシステムである。レッドマジックは開発環境にすぐれ、完璧なセキュリティを実現するシステムだ。しかし、その完璧なはずのシステムにトロイの木馬が仕掛けられ、開発した当の真賀田博士も殺人事件に巻き込まれてしまう。

 本書から始まる S&M シリーズには、この後真賀田四季はほとんど出て来ないが、UNIX は随所に登場する。主人公の犀川は大学のシステムに telnet で接続して、コマンド行でメールを読み書きしたりするので、最近の読者にはわからないかもしれない。物語の最後である人物はこう語る「そもそも生きていることの方が異常で、機械が故障しているような状態、つまり生命とはバグなのだ」。ぼくらはバグだったのかぁ。

UNIX MAGAZINE Classic with DVD(DVD4枚付)

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