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ハッカーを読め (0)

2007年に発売された、UNIX MAGAZINE Classic に書いた記事を再掲。

 大学で就職を考えていた頃、企業情報を読んでなんとなく面白そうな会社の資料を請求してみると、その年の春の社内報を送ってくれた。各部署の部門長が新入社員向けにそれぞれの部署の紹介文を載せる中に、一人だけ格別不真面目な人がいた。たしか4項目の内容のうち最初の3つは「回答不能」「回答不可」「回答拒否」、とそんな具合だったと思う。最後の新入社員に向けて一言という項目には、ただ「ハッカーになれ」と書いてあった。ハッカーがどういう意味なのかを知らなかったが、なぜかハッカーとやらになってみたいなあと思った。それまで名前も知らなかったSRA という会社に就職し、その格別不真面目だった当の太田部長の下で社会人生活を始めることになった一番の理由はこの一言だったかもしれない。ユニマガ創刊時から100回に渡って連載した Little Language を取りまとめていたのはこの太田さんである。

 ハッカーというのは優れたエンジニアに対して使う言葉で、悪事を働くのはクラッカーと呼ぶべきだという人もいる。その意見を否定はしないが、個人的にはコンピュータへの侵入行為をハッキングと呼ぶことにそれほど違和感を感じない。実際のところ、オペレーティングシステムのバグを突いてシステムを思い通りに動かすためには、システムに対する高度な知識と分析能力に加え、強い忍耐力と鋭いひらめきが必要とされる。マニュアル通りに書けば動いてくれるソフトウェア開発に比べ、ハッキング要素が高い分野なのである。そういう意味では、他人が作ったツールを使って単に侵入することを楽しむような連中をハッカーと呼ぶのは不適切であろう。

 Macintosh 開発の中核エンジニアだったビル・アトキンソンのことを憶えている読者は多いと思うが、現在は自然写真家として活動していることを知る人は少ないだろう。そのアトキンソン氏が何年か前に写真集出版のために来日した折に講演を聞く機会があった (ちなみに写真集の被写体は全部「石」です)。講演のテーマはは印刷技術に関するもので、オフセット印刷で写真の色を再現することがいかに難しいか、インクの選択にどれほど苦労したかなどで、コンピュータの話は全然出て来ないのだが、印刷技術について熱く語る彼の姿は紛れもなくハッカーだった。プログラムを作ろうが悪事を働こうが印刷職人になろうが、ハッカーはハッカーなのだ。

 さて、「ハッカーになれ」という言葉に誘われて (騙されて?) UNIX の世界にひきずり込まれたせいか、小説など技術書以外の書籍にハッカー、ソフトウェア、UNIX などという言葉が登場すると、なんだか嬉しくなってしまうのだ。今回は、これまでに印象に残っているそんな本を紹介したいと思う。コンピュータがらみの技術や犯罪をテーマにした小説や映画も好きだが、そういう「いかにも」なのはむしろ技術書に近いイメージだ。うまく言えないが、そういうのとはちょっと違うものを選んだつもりである。


ビル・アトキンソンの "WITHIN THE STONE" は、まだ売ってますね。再版するとは思えないので、欲しい人は今のうちに買っておいた方がいいんじゃないでしょうか。ホームページは www.billatkinson.com

WITHIN THE STONE―ビル・アトキンソン作品集

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UNIX MAGAZINE Classic with DVD(DVD4枚付)

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